2階以上の家の間取りを決める時に、他の部屋との兼ね合いから重要になるのが階段の位置です。
そして、近年デザイン性の良さから居間に階段を設ける「リビング階段」を検討している方も多いと思います。
部屋の雰囲気がお洒落になりデザイン性の高い住宅にすることができるリビング階段ですが、良い点ばかりではないのが現実です。
実際にこれから新築の間取りを検討する予定の方や、建売住宅の購入を検討していて様々な間取りの家を見ている方のために、リビング階段について下記の内容でまとめています。
☑リビング階段のデメリット
☑リビング階段のメリット
☑リビング階段の光熱費のこと
☑結論 リビング階段にすべきか、やめるべきか
上記の内容は筆者の建築士としての設計の実務経験と、9年以上リビング階段の家に住んでいる経験を根拠にまとめています。
リビング階段の家に住んでみたいけど、住んでから後悔したり失敗することはないのか心配な方が、自分の家をリビング階段にするかやめるのかを判断できるような内容になっています。
リビング階段のデメリット
この章ではリビング階段のデメリット・メリットをリビング階段の家に9年間住んでみて感じたことと、筆者が設計したリビング階段の家に住んでいる方から聞いたデメリットをまとめています。
家中に音が響きやすい
リビング階段の間取りの家は、室内に音が響きやすくなってしまいます。
特に1階で発生した音を二階で聞いた時に感じる音の大きさが実際に発生している音より大きく聞こえます。
リビングで見ているテレビの音で説明します。
2階の階段ホールで聞こえる音が大きく聞こえるのでテレビの音量を確認すると、思いのほか音量が低いことが多くあります。
リビング階段の間取りの特徴として、2階で体感する音が大きく聞こえる傾向にあるのであなたのライフスタイルをよく検討した上でリビング階段を採用すると良いでしょう。
臭いが上階に充満する
吹き抜けのある間取りも同様ですが、リビング階段の間取りの家も1階で発生した調理などの臭いは上階に充満します。
階段室が吹き抜けになってしまうので避けることができませんので、どうしても臭いが気になるという方は2階にキッチンを設ける間取りの検討などが必要になります。
暖房代が高くなる
1階のみに暖房器具を設置している家はリビング階段の間取りにすることで階段から暖かい空気が上階に上がり1階が暖まるまでに時間を要してしまいます。
このことから、普段居間に在室していることが多い家庭では1階を暖めるまでの時間が無駄に長くなり、暖房代が高くなってしまいます。
この点の解決策は詳しくは後述します。
家族のプライバシーが損なわれる
リビング階段にすることで、子ども部屋を二階に配置した場合は友達を連れてきた時などは今にいる家族が見ることになります。
お年頃の子供になると、常に家族に見られることを避けたい気持ちになることもあると思いますので、家族構成によってはリビング階段の採用をよく検討する必要があります。
掃除の負担が増える
上階に行く来客があると、リビング階段の家はリビングの様子がよく見えてしまいます。
いつも散らかりがちな家だと、来客にあまり見られたくないという心理が働くと思います。
リビング階段は階段室を通して上階のホコリが下階に落ちてきやすく汚れやすくなります。
また、部屋が煩雑している様子も見られてしまいますので、他の階段室方式の家より常にきれいにしておく必要がある場合もあり、掃除の負担が増えることを考えておく必要があります。
工事費が割高になる
階段室型の階段であれば、階段の周りは壁になるので壁の仕上げをするだけになります。
一方で、リビング階段の場合は手摺にもデザイン性を付与するため手摺子などの装飾が必要になり、ビニールクロスなどで壁を仕上げる場合に比べて工事費が高くなります。
リビング階段は工事費にも余裕を見ておく必要があることを把握しておくと良いでしょう。
リビング階段のメリット
家族の一体感を感じられる
廊下型階段と比べて、リビング階段は上階にいる家族の存在感が伝わりやすくなります。
他の階段方式と比べて家族が何をしているのか、さらには家に居るのかいないのかわからないといったことがなくなります。
リビング階段は家族が上階の個室にいても在宅していることがわかります。
帰宅した時もリビングを通るのでわかりやすく、常に家族の一体感を感じながら過ごすことができる家になります。
子供の様子を把握できる
お子様がいる家庭ではリビング階段にするメリットは大きいと思います。
お友達が家に来た時にはどんな友達を連れてきたのかを見ることができ、友人関係を親が把握できる機会にもなります。
また、部屋にいても何をしているのかがわかりやすくなりますので、ゲームやスマホのやり過ぎを注意しやすくなります。
さらに帰宅時の様子や表情の変化を親が感じ取ることができるようになります。
面積以上の広さを感じる開放的な空間を造れる
階段室型の間取りと比べて、リビング階段は階段の上がリビングの吹き抜けにもなることで開放的な空間になります。
また、上階に上手く窓を配置することで階段が下階への光の通り道にすることができ、更に明るい空間にすることができます。
リビング階段は階段が上階までの吹き抜けにもなることで開放的になり、実際の面積より秘匿感じる空間を造ることができます。
リビング階段の光熱費のこと
この章ではリビング階段に仕様と検討中の方が心配することが多い、光熱費について解説していきます。
冷房対策
リビング階段の家の冷房について心配することが多いのは、一階のエアコンの冷気が上階に上がってしまうことではないでしょうか。
この点については冷気は下に下る原理から、上階に冷気が上がってしまい1階が涼しくならないという心配は必要ないと思います。
1階のみにエアコンを設置した場合は、下の暖気が上階に上がることで上階だけ暑くなります。
また、2階建ての家の2階のみにエアコンを設置した場合はどうでしょうか。
この場合は階段を通して冷気が一階に下りますが、一台のエアコンで1階と二階を涼しくするにはエアコンの負荷が大き過ぎます。
1階と二階を涼しくしたい場合は両方の階にエアコンを設置することで、家全体を均一に涼しく、さらに電気代も余計にかからずにエアコンを作動させることができます。
暖房対策
リビング階段にすると1階が寒くなるのでは!?という声も多いです。
この点については次の2点で解決できます。
高断熱仕様の家にする
家の断熱性能の気密性の高い高断熱仕様の家にすることで、リビング階段の家で2階しか暖まらないということを防げます。
特に屋根の断熱性能が低く、気密性能の悪い家は2階に上がった暖気が下に下がらずに逃げてしまうことになってしまいます。
高断熱仕様の家は夏のエアコンの負荷を下げることもできますので、お金を掛けても絶対に損をしないしようといえます。
2階にも適切に暖房を設置する
高断熱仕様の家にして、さらに2階にも適切に暖房を設置することで家全体をムラがなく暖房することができるようになります。
筆者が住んでいる北海道の厳寒地では、エアコン一台で家全体を暖めるという仕様の家を作っている建築会社があります。
ただし、この仕様の家に住んでいる人の実際の感想は、「家が寒い」ということです。
セントラルヒーティングなどで2階の各室に暖房器具を設置して、家全体を暖める暖房方式にしたほうが住んでから寒かったといった失敗をしなくて良くなります。
結論 リビング階段にすべきか、やめるべきか
リビング階段にすべき人
家の中を開放的でデザイン性の高い空間の家を造りたい方にとってはリビング階段は最適解です。
また、子供がまだ成長段階の家庭でもリビング階段にすることで、子供の様子やどんな友人を連れてきているのか交友関係を知ることができるようになります。
同じ家に住んでいながら家族がいつ帰宅したのかも分からず、どんな様子なのかもわからないといったこともなくなります。
家族の存在感を感じながら、家で過ごしたいという方はリビング階段を取り入れると良いと思います。
リビング階段をやめた方が良い人
同じ家に住んでいながら家族個々のプライバシーを重視したい方はリビング階段をやめておいた方が良いです。
また、リビング階段は家の中の見通しが良くなりますので、掃除をしていなかったり片付けをせずに散らかっている様子を来客に見られやすくなります。
常に家をきれいにしておく必要性も出てきますので、あまり掃除や片付けが得意ではない方もリビング階段はやめておいた方が良いでしょう。
まとめ
☑リビング階段のデメリット
☑リビング階段のメリット
☑リビング階段の光熱費のこと
☑結論 リビング階段にすべきか、やめるべきか
上記の内容でリビング階段について解説しました。
他の部屋との動線や、デザイン性に大きく関わる階段の位置は間取りを決める際の重要なポイントになります。
リビング階段を採用する前にこの記事の内容を知り、最終的にリビング階段にすべきかやめるべきかの判断材料になればと思います。
間取り全体の作成の流れはこちらの記事で詳しく解説しています。
階段の位置や形も重要ですが、トイレの一も家の使い勝手の良し悪しに大きく影響します。
リビングにトイレがある「リビングイントイレ」についてメリットから問題点、問題点の解決策を下の記事で解説しています。
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