注文住宅を新築するために吹き抜けのある間取りを検討している方、リフォームで新たに吹き抜けを作りたいけど作って後悔しないか不安な方も多いと思います。
ネットで吹き抜けのことを調べると、光熱費が悪いとか音がうるさい、臭いが充満するなど悪い評判も多く見られます。
さらに最悪だったいう声もあり、吹き抜けを検討している人にとっては不安な点も多いのが吹き抜けです。
実際のところ吹き抜けはどうなのか?
この記事ではこれから吹き抜けのある家を検討している方に向けて下記の内容で構成しています。
☑吹き抜けのデメリット4選 |
☑吹き抜けのメリット |
☑夜の明るさ対策 |
☑吹き抜けを後悔した人の特徴2選 |
☑吹き抜けを後悔した人が後から対処できる方法と注意点 |
☑結論 |
この記事を読むことで、吹き抜けを作った人もやめた人も後悔せずに満足できる間取りの家を作ることが出来るようになります。
その理由は、筆者が建築士としてこの記事に書いてある内容を反映させた間取りの打合せをして、住んでいる人が吹き抜けに対する不安がなくなり満足できる家を作ってきたからです。
間取りの失敗の後悔はずっと続いてしまうものです。
そうならないためにもこの記事に書いてある内容を事前に知り、納得できる間取りを作って欲しいと思っています。
吹き抜けのデメリット4選
この章では吹き抜けを作ることを躊躇している人が気になるデメリットを解説していきます。
どの項目も吹き抜けを作る上では避けて通れないことになります。
冷暖房の効率が悪い
吹き抜けを作ると冷暖房の効率が悪くなるから止めておいたほうが良いという声が多くあります。
冷房と暖房について建築のプロの視点で解説していきます。
冷房について
1階に冷房をつけている家の1階の冷房の効率が悪くなることはほぼないと考えて良いでしょう。
冷気は上階に上がりづらいので、冷房をつけている1階の部屋は涼しくなります。
ただし、夏の暑い時期は2階は冷房がないと暑くなります。
敷地条件にもよりますが、2階の方が直射日光が当たりやすく窓から入る熱と、1階から上がる暖かい空気により2階の部屋は暑くなります。
どちらの階も涼しくしたい場合は、1階と2階に冷房を設置することで家の中の温度のムラを減らすことが出来ます。
暖房について
一方、暖房は吹き抜けがあることで暖かい空気が上階に上がり、1階が暖まるまでに時間が掛かります。
これは吹き抜けがある以上避けることが出来ません。
吹き抜けがある家で暖房の効率を良くして、家の中が寒くならないための対策は以下のとおりです。
1.断熱性能の高い家にする |
2.吹き抜けにシーリングファンを付ける |
3.十分な容量の暖房設備を設置する |
上記の対策をすることで、吹き抜けがあっても家の中が寒くならないための対策ができます。
1と2は冷房の効率を良くする効果もありますので、あなたの家に取り入れることで吹き抜けの冷暖房の効率対策になります。
掃除が大変
吹き抜けの窓のガラスや窓枠の埃を取る掃除は大変な作業になります。
脚立や長い柄の付いた掃除用具が必要になり、掃除が毎日簡単にできるものではなくなってしまいます。
細かい汚れや埃が気になる方は吹き抜けをやめるかキャットウォークを作るなどして簡単に掃除ができるような工夫が必要です。
吹き抜けの一部にキャットウォークを作ることで、窓の掃除がしやすくなるだけでなく開閉できる窓を設置することも出来ます。
音が響きやすい
吹き抜けがあると家の中で音が響きやすくなります。
1階と2階のどちらにいても上下階の音は響きやすく実際の音量より大きく聞こえる特徴があります。
吹き抜けの下のリビングがある場合、2階のホールで1階のテレビの音が実際の音量以上に大きく聞こえてうるさく感じます。
また、1階からも2階で歩く音が響きやすくなり、上下階の間取りの配置を工夫しないと落ち着いて過ごすことが出来ない家になってしまいます。
臭いが広がりやすい
吹き抜けがあることで1階で発生した調理などの臭いは2階に広がります。
吹き抜けを介して2階の個室まで臭いが広がり不快に感じます。
換気経路や臭いを吸収する仕上材を使うなどの工夫をすることで軽減できますが、完璧ではないのでよく検討する必要があります。
筆者が設計する家で壁や天井の仕上げに採用している「シラス壁」は消臭効果が高く、15~20分で室内の不快な臭いを消す効果があります。
シラス壁の特徴については下記の記事で詳しく解説しています。
床面積が減る
家の中で吹き抜けを作った時は2階の床面積が減ります。
2階に必要な部屋の用途・数・広さが十分に取れている間取りであれば良いのですが、吹き抜けを作るためにいずれかを妥協した時は後悔する可能性が高くなります。
その理由は、吹き抜けを作ったことで、住んでみてから部屋の広さ・用途・数が足りないと思った時に大きな工事が必要になり諦めてしまう場合が多いからです。
吹き抜けを作らないでもう一部屋作る。収納を広くするなど吹き抜けに面積が取られたことで妥協した点を後悔してしまいます。
吹き抜けのメリット
この章では吹き抜けがあることの「メリット」を解説していきます。
デメリットばかりではなく、吹き抜けを作ることで解決できるメリットもありますので知って頂ければと思います。
明かりを取り入れやすくなる
住宅密集地や狭小住宅では吹き抜けの恩恵が大きくなります。
隣地の家との距離が近い住宅密集地は窓からの明かりを入れづらく、特に1階の居室の明るさが取りづらくなります。
このような場合に吹き抜けを作ることで上階から下の階に明かりを取り入れることが出来ます。
直射日光が入らなくても、窓からの明かりは入りますので、暗くなりがちな1階の居室に明かりを入れることで晴れやかな気分で過ごすことが出来るようになります。
また、狭小住宅でも吹き抜けが下階への明かりの通り道になり家の中を明るくすることが出来るようになります。
面積以上の広さを感じられる
吹き抜けは天井が抜けていることによる開放感で、実際の面積より部屋を広く見せる効果があります。
また、吹き抜けに化粧梁を架けて木の温もりを感じる部屋にするといった工夫もできますので、開放的にするだけでなくインテリアのアクセントを付与することも出来ます。
化粧梁・あらわし梁上手に取り入れるために知っておきたいメリットとデメリットは下記の記事で詳しく解説しています。
日差しが入りやすい敷地条件や、景観の良い郊外に建てる家の吹き抜けに大きな窓を付けることで家の中から景色まで楽しむことが得きる家になります。
また、吹き抜けに天窓を付けるとさらに沢山の明かりを室内に取り入れることが出来るようになります。
雨漏りの心配やリスクもありますが、天窓を付けることのメリットもあります。
天窓について詳しく知りたい方は下記の記事を参照してみて下さい。
夜の明るさ対策
吹き抜けを作ると、夜に照明器具を付けても部屋が暗くなりやすいのではということも聞きます。
この点については、壁に取り付けるブラケット照明で間接照明ではない照明を1階と2階の中間に付けることで部屋は暗くなりません。
ただし、照明器具の明るさの容量が足りないと暗くなりますので、照明器具を選ぶ際に注意が必要です。
吹き抜けを後悔した人の特徴2選
この章では吹き抜けを作って後悔した人の特徴を書いていきます。
ネットで後悔したと発信している人の特徴は次の2つに該当する方が多いように思います。
1.勉強不足 |
2.家族の意見がまとまらないまま家を建てた |
以下で解説します。
勉強不足
後悔しない間取りの家を作るためには知識とセンスを持った設計士に依頼することも大切ですが、建主自身も勉強しておく必要があると思います。
その理由は以下のとおりです。
1.間取りを作るプロの人間でもそれぞれ考え方が違う |
2.お客様が勉強しておくことでデメリットになることを知ることが出来る |
1の理由はお客様から依頼を受けた設計士もそれぞれ吹き抜けに対する考え方が違うということです。
お客様がいらないと言ってもあった方が良いという人もいるように、デメリットとメリットの感じ方が違います。
そうならないためにも2が重要になります。
お客様が吹き抜けのことをよく勉強することで、絶対に避けたいデメリットを知っておけば、プランを作る人にはっきりといらないという意思を表示できます。
吹き抜けだけでなく間取り全般に言えることですが、失敗や後悔をしている人は自分の意見ではなく誰かの意見に流された結果、失敗している人が多いです。
そうならないためにも自分自身が勉強して事前に知識を得ておくことで自分の考えを間取りに反映させることが出来るようになります。
家族の意見がまとまっていなかった
家造り全般に言えることですが、後悔する人のほとんどがこれに当てはまると思います。
家造りを進めるうえで間取りはもちろん、使うものやクロスの柄から照明器具の一つまで家族の意見をまとめることが大切です。
物の失敗は取り替えれば解決できますが、間取りの失敗は簡単ではありません。
部屋の広さや配置も簡単に変更できませんし、吹き抜けのように床がない空間はあとから変えることの難易度が一気に上がってしまいます。
次の項目では吹き抜けで失敗・後悔してしまった人がどうしても直したいという場合に後からできることを解説していきます。
吹き抜けを後悔した人が後から対処できることと問題点
吹き抜けを「やめる」(床を作る)方法と注意点
吹き抜けを作ったけどやっぱりやめておけば良かったと思っている人もいると思います。
吹き抜けを床にして部屋を作ったりホールを広くしたい時は下記の点を事前にクリアしている必要があります。
1.容積率がオーバーしない |
2.電気配線の事前準備が |
3.不自然な床の継ぎ目ができる |
4.1階の天井に継ぎ目が出ないような工夫が必要 |
5.吹き抜けの照明器具の位置の検討 |
吹き抜けをやめることは工事をすることで解決できますが、上記の点に注意をしても仕上げに違和感が出てしまうことは避けれないのでオススメはできません。
一つずつ説明していきます。
容積率がオーバーしない
吹き抜けをやめて床を作ることで2階の床面積が増えます。
容積率がオーバーしない敷地条件と、吹き抜けを作る前に容積率に余裕がある間取りである必要があります。
敷地条件は建築する地域で容積率が異なりますので、将来的に吹き抜けをやめる前提で作っておく必要があります。
電気配線の事前準備が必要
一度仕上げが終わった部屋に新たに電気配線を通すのは簡単ではありません。
吹き抜けをやめて部屋にする、もしくはホールを広げた時にコンセントや照明器具の取付ができるように電気配線が必要になります。
電気配線も一度塞いだ壁の中を通すのは困難なため、事前の計画が重要になります。
配線を露出して通す方法もありますが、見た目が良くないので露出配線は考えないほうが良いです。
不自然な床の継ぎ目ができる
吹き抜け部分を一部屋と考えた時に、間仕切り壁を作らずに床だけを広げると床の仕上材に継ぎ接ぎのような不自然な継ぎ目ができます。
また、新築やリフォームの時点で吹き抜けをやめる工事までに時間が経っていると同じ床材が無く、同じ色柄の材料での仕上げが困難になります。
1階の天井に継ぎ目が出来る
床と同じく、吹き抜けをやめた場所の1階部分には天井に継ぎ目ができます。
見切り材を当てるなどの工夫をすることで解決できますが、不自然な感じは解消しないことのほうが多いです。
吹き抜けの照明器具の位置の検討
吹き抜けがある時は吹き抜けの明かりを取りやすい位置に照明器具を取り付けます。
将来的に吹き抜けをやめる前提で工事をしていないと、吹き抜けをやめた時に照明器具が2階の床付近についていたり、1階から見ても不自然な位置についてしまう可能性があります。
また、照明器具の位置をずらした時に電気配線を付けるための配線の孔や、照明器具が付いていた場所の仕上材の色が変わっていることもあります。
照明器具の位置もずらすのは簡単ですが、様々な支障が出ますので計画性が重要になります。
吹き抜け(床を取る)を「作る」方法と注意点
床を取り払って吹き抜けを作ることも出来なくはありません。
ただし、吹き抜けを作る時以上に当初の工事の段階で吹き抜けを作る部分に様々なことを計画しておく必要があります。
1.電気配線を通さない |
2.設備配管を通さない |
3.集中換気の経路にしない |
4.仕上材をきれいに施工できない |
5.住みながらの工事が現実的ではない |
電気配線を通さない
吹き抜けを新たに作る1階の天井部分には電気配線を通さないようにしておく必要があります。
壁も塞がっている状態ですので、1階の天井の中にあった配線を移動する場所も困難を極めます。
施工できたとしても配線が露出するなど見た目が悪くなる可能性が高いです。
設備配管を通さない
1階の天井に設備配管があると配管の移動や再配管は厳しくなります。
当初から吹き抜けを作る可能性がある前提で工事をしていないと様々な場所に支障が出るので当初からの計画が重要になります。
換気経路にしない
集中換気の配管の経路にしてしまうとあとから配管を直すことはほぼ不可能になります。
パイプファンにするなどの将来的な計画が必要になります。
仕上材をきれいに施工できない
吹き抜けを作る時と同様に、一度仕上がっている室内の工事をすると継ぎ目ができたりなど仕上材をきれいに施工することが難しくなります。
吹き抜けをやめる部分が1・2階の仕上げの支障がない場所にするなどを事前に計画しておく必要があります。
住みながらの工事は現実的ではない
自分達家族が住みながら吹き抜けの工事をするのは現実的ではないです。
床を壊すにも作るにも工事で発生する音は相当なものになります。
工事をしていない場所で過ごすことが出来ないこともないかもしれませんが、工事のための養生をする必要があるので、工事関係者の出入りも含め現実的ではないでしょう。
吹き抜けを作る、もしくはやめるにしても家全体をリフォームする時の方が工事がしやすく費用の負担も増えないので現実的だと思います。
新しい家ですぐに吹き抜けのことで後悔しないためには、事前にしっかりと計画性を持って間取りを作ることが大切になります。
結論
吹き抜けを作った方が良い人
この記事に書いてあるメリットを優先させたい人は吹き抜けを作ることで後悔することはないと思います。
上述したように、家の中に明かりが入りづらい条件の家では吹き抜けを作ることで明かりを取り入れて開放的な空間ができます。
やめた方が良い人
上述したデメリットの中で一つでも気になることがあり、住んでいく上で心配が拭えない人は吹き抜けをやめておいた方が良いです。
一度作った吹き抜けの工事をするのは余計な費用もかかり、きれいに仕上げが出来ない支障が出る可能性が高いです。
家族構成が変わり大きなリフォームをする時に工事をした方が現実的ですので、事前によく検討して後悔しないように吹き抜けを検討することが大切です。
まとめ
☑吹き抜けのデメリット4選 |
☑吹き抜けのメリット |
☑夜の明るさ対策 |
☑吹き抜けを後悔した人の特徴2選 |
☑吹き抜けを後悔した人が後から対処する方法と注意点 |
☑結論 |
上記の内容で吹き抜けを作って失敗しないためのポイントをまとめました。
吹き抜けはいらないけど部屋を明るくするためにリビング階段はどうだろうと検討している方もいると思います。
吹き抜けと同じような特徴もありますので、リビング階段について下記の記事で詳しく解説しています。
吹き抜けを上手に取り入れる間取りを作りたい方には下記の記事で注文住宅の間取りを成功に導く手順を6つの項目で解説しています。
リフォームの機会に間取りを変更して吹き抜けを作りたい方もいると思います。
リフォームは業者が変わるだけで工事代金も大きく変わりますので、事前に比較して相場を知ることが大切です。
複数の業者から見積を取って相場を知ることで価格交渉を有利に進めることが出来るようになります。
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