新築やリフォームで新しいトイレを選ぶ時、タンク付きのトイレとタンクレストイレのどちらかで迷う人も多いと思います。
タンクレストイレはトイレ自体に高級感があり、デザイン性や機能性、節水が出来て経済的に優れた商品であるのは確かです。
ただし、購入する前に知っておいた方が良いデメリットもあります。
そこでこの記事ではタンクレストイレのデメリットとメリットをタンク付きのトイレと比較して解説していきます。
10年間自宅でタンクレストイレとタンク付きトイレの両方を使ってきました。
また、建築士として、今まで300棟以上の住宅やマンションを設計し、採用するトイレを決めるために各メーカーのショールームで実物を見て勉強してきました。
本記事の内容は筆者の建築士としての実務経験と、タンク付きのトイレとタンクレストイレを10年間使ってきたユーザーとしての経験を元に解説しています。
さらに10年間の間に北海道で起きた大停電という災害も経験していますので、タンクレストイレが停電に弱いという噂が気になる方にも参考になる内容になっています。
あなたの自宅でトイレが2箇所あって両方付けれるのであれば問題ないと思いますが、タンク付きかタンクレスのどちらか一つを選択する方にとっては最終的に決める判断材料になる内容になっています。
タンクレストイレのデメリット
この章ではタンクレストイレのデメリットを解説していきます。
タンクレストイレならではのデメリットになりますので、これから自宅のトイレを決める際の参考にしてみて下さい。
1.停電の時に不便になる
タンク付きのトイレはタンクの水を使用後に流すので、災害時は断水していなけれ普通に使うことが出来ます。
一方でタンクレストイレは水道直結で水を流す仕組みなので、停電が発生した時は通常通りの使い方では使用することが出来ません。
筆者の自宅で使用しているTOTOのネオレストの場合は停電時には下記のような使用方法で水を流すことが出来ます。
1.6リットル以上の水を便器に入れる |
2.便器横のパネルを外す |
3.パネル内部のレバーを引いて水を流す |
上記の操作で停電時でもトイレを使用することが出来ます。
タンクレストイレは停電時に使用できなくなると心配な方が多いのですが、停電時でも水が使用できればトイレを使うことが出来ます。
各メーカーで停電時の使用方法は異なりますので下記リンクを参照してみて下さい。
※TOTOのHPから引用
※LIXILのHPから引用
※パナソニックのHPから引用
2.費用が高額
タンクレスはタンク付きのトイレと比べてトイレに掛かる費用が高額になる傾向があります。
その理由として次の2点です。
1.トイレ本体の費用が高額 |
2.手洗い器が別途必要になる |
1.トイレ本体の費用が高額
タンクレストイレはタンク付きのトイレと比べてトイレ本体の費用が高額になるメーカーがほとんどです。
なぜ費用が高額になるのかというと、その理由は機能の多さです。
タンクレストイレはグレードが高くなるほど水の流し方や、自動開閉、流す時の水量の選択が多いなど機能が充実しています。
ただし、日常の使用で沢山ある機能を全て使うのかというと、使わない機能が多いのも事実です。
自動開閉機能も使う人によって必要のある人とない人に分かれる機能です。
さらに、便器内の水溜め部分の照明は必要のない機能なので、筆者は使っていません。
タンクレストイレとタンク付きのトイレで迷っている方は、自分たち家族が日常で使う機能を十分に検討すると良いです。
よく知ると要らない機能が多いこともあります。
2.手洗い器が別途必要になる
タンクレストイレを設置する場合、トイレ内で手洗いをするための手洗器が別途必要になります。
収納ができる手洗い器が付いたカウンタータイプを選ぶ人が多いですが、小さな手洗器のために掛かる費用は意外と高額になります。
☑筆者の自宅では手洗いカウンターを造作
また、「手洗い器+水栓+排水管」を別々に購入する方法もありますが、単品で揃えてもカウンターがセットの商品と価格差が小さいので割高感を感じることが多いです。
トイレの近くに手洗いができる部屋がある間取りであればトイレ内に手洗い器が必要がないこともありますが、来客時のことを考えるとトイレ内に手洗いがあった方が安心できます。
高額なタンクレストイレ本体に手洗いカウンターを設置すると、便器で手洗いが完結できるタンク付きのトイレと比べてかなり高額になります。
3.便座のみの交換ができない
ウォシュレットなど洗浄の機能は便座についているメーカーがほとんどですが、タンクレストイレの洗浄機能が故障すると便座のみの交換ができないメーカーが多いです。
タンク付きのトイレは便座のみの修理交換が出来ますが、タンクレストイレは本体ごと交換するか修理対応になるので、万が一の故障時に弱い傾向にあります。
筆者の自宅で使っているタンクレストイレの便座の蓋が壊れた際に、修理の金額を調べたところ2万円から3万円の費用が掛かる見積りでした。
将来故障した時に費用を抑えたい方にはタンクレストイレは便座のみの交換ができないことを知っておくと良いです。
4.水圧が弱いと設置できないことがある
タンクレストイレは水道直結で水を流します。
古い住宅で宅内の配管の水圧が弱いと設置できないことがあります。
リフォームでタンクレストイレの設置を検討している方は購入前に確認しておく必要があります。
筆者が使用しているTOTOのタンクレストイレは水を流す時には水圧の影響はありませんが、ウォシュレットの水の出が悪くなる影響がある可能性があり、最低必要水圧が定めれられています。
詳しくは下記ページで参照して下さい。
※TOTOのHPから引用
タンクレストイレのメリット
1.掃除が楽になる
タンクレストイレはトイレ掃除が楽になります。
その理由は便器の形状に凹凸が少ないからです。
上の画像のようにタンク付きのトイレにはタンクレストイレにはない凹みがあり、拭きう掃除をする時に少し面倒に感じることがあります。
また、掃除が楽になる要因のもう一つに、便座部分を昇降できることがあげられます。
便器と便座の隙間も昇降できることで楽にきれいに掃除ができます。
2.節水になる
タンクレストイレは水道直結でタンクに水を貯める必要がなく、タンク付きのトイレと比べて節水になります。
TOTOのタンクレストイレの上位機種であるネオレストとタンク付きのトイレの使用水量は下記のような差があります。
※TOTOのHPから引用
さらに筆者が使用しているTOTOのタンクレストイレは流す時の水量が三段階になっていて、小用の時に流す水の量を更に少なくすることが可能です。
筆者の自宅のTOTOネオレストには「eco小」の水量が選択できますが、二階で使用しているタンク付きのトイレには「大」と「小」のみ水量を選択できます。
住んでいる人が多い世帯に設置するトイレは節水ができるタンクレストイレにすることで毎月の水道光熱費を抑えることができるようになります。
3.デザイン性が高い
タンクレストイレはタンクがなくすっきりとしたデザインで、トイレ空間のデザイン性を上げることができる高いデザイン性を誇ります。
ここ何年かで高級志向の便器も販売されており、さらにデザイン性の高い商品が販売されるようになってきています。
4.機能が豊富
タンクレストイレは価格が高いだけでなく、タンク付きのトイレと比べて使える機能が豊富です。
TOTOのタンクレストイレの機能を選択するリモコンはウォシュレットの選択だけでも選択肢が多くあります。
対して二階で使用しているタンク付きのトイレは至ってシンプルで最低限の機能のみとなっています。
他にもタンクレストイレの方はリモコンのボタンで便座の蓋の開閉もできて機能が豊富に付いています。
ただし、使う人によっては要らない機能もありますので、購入する際は自分たち家族にとって必要かどうかをよく検討する必要があります。
5.流す時の音が静か
タンクレストイレは水を流す音がとても静かです。
トイレの使用後の音を小さく出来ますので、寝室や個室にトイレが隣接する間取りの家では効果を発揮します。
6.水を貯める必要がない
タンクレストイレはタンクに水を貯める必要がありません。
その理由はトイレで流す水が水道直結になっているためです。
水を流した後でタンクに水を貯めるまで水が出続けることがないので、使用後早い段階でトイレが静かになります。
また、連続した仕様も可能ですのでこの点からも家族が多い家ではタンクレストイレのメリットを活かすことが出来ます。
7.トイレ空間が広くなる
タンクレストイレはタンク付きのトイレと比べて奥行きが短い便器が多いです。
参考までにTOTOのタンクレストイレ、ネオレストの床排水の奥行きは以下の画像のように700mmです。
※TOTOのHP、オンラインカタログから引用
対してタンク付きのトイレで同じく床排水のモデルの奥行きは以下の画像のように760mmです。
タンクレストイレとタンク付きのトイレの奥行きの差は60mm(6cm)でほんの少ししかないように思えるかもしれません。
ですが、どうしてもトイレの奥行きが取れない間取りの家では、60mm広いことで窮屈な感じを減らすことが出来ます。
タンクレストイレは便器を設置することで起きてしまうトイレ空間の狭さを解消することが出来ます。
十分に奥行きが取れる間取りの家でも、タンクレストイレを設置することでトイレの中が広く開放的な空間を作ることができるようになります。
タンクレストイレで経験した大停電を回顧
タンクレストイレを検討している方の中に停電が起きたら使えなくなるのではという心配をしている方が多いと思います。
この章では2018年に筆者が経験した北海道ブラックアウトを振り返り、災害が発生した時にタンクレストイレは不便なのか、使えないのかという疑問に回答していきます。
実際に停電が起きた時にタンクレストイレだけで安心できるのかが分かる内容になっています。
1.タンクレストイレで災害時に困ったこと
災害が起きて停電が発生した時に困ったことは次の2点です。
1.説明書がすぐに見つからなかった |
2.明かりがないと操作方法がわからない |
1.説明書がすぐに見つからなかった
実際に停電が起きるとやはり冷静にいる方が無理があると実感しました。
トイレ以外にも使えなくなっているもの、特に停電が起きるとすぐに気になるのが冷蔵庫の中身です。
冷凍食品などをなるべく溶けづらくするか、早めに食べるかなどを考える必要が出てきます。
その次にトイレが使えるかどうかを気にします。
誰でもそうだと思いますが、停電が起きる前提で普段トイレを使っていないので、説明書がないとタンクレストイレの停電時の使い方はわからないものです。
説明書は家を新築した時に新しく設置した商品の説明書をまとめていますが、すぐに見つかりませんでした。
さらに停電時は懐中電灯などで照らすしかないので、部屋の照明下より見つかるまでに時間が掛かります。
普段から災害を意識して生活を送っていなければ、タンクレストイレを停電が起きている状況で普通に使うのは難しいと感じました。
2.明かりがないと操作できない
停電時にタンクレストイレで水を流す方法は各メーカー決められています。
停電が起きてから初めて使う時は説明書がないと操作方法はわからないでしょう。
さらにトイレを使うたびに明かりがないと操作できないので、停電時のタンクレストイレの操作はとても不便だと思います。
2.災害を経験して思うこと
この章ではタンクレストイレで災害を経験してみて、建築のプロとして災害に備えるならタンクレストイレとタンク付きトイレのどちらが選ぶべきかを解説していきます。
1.トイレが一箇所ならタンク付きが安心できる
あなたの住まいにトイレが一箇所でしたら、災害に備えるという点ではタンク付きのトイレを付けておいた方が良いです。
その理由は筆者が停電を経験してみて、タンクレストイレを停電が起きている状況で使うことが非常に難しいと思ったからです。
タンク付きのトイレでも十分な機能と使い勝手で使用することが出来ますし、停電が起きた時にタンク付きのトイレの方が普通に使える安心感があります。
2.トイレが2箇所あるなら一台はタンク付きにしておく
家の中にトイレが2箇所ある間取りの家に住んでいる方、もしくは住む予定の方は2箇所あるトイレのうち、一箇所はタンク付きのトイレにすることをおすすめします。
一台をタンク付きのトイレにすることで万が一の災害に備えることが出来ます。
さらに、タンクレストイレより購入費用がかからないことが多いので予算の節約にもなります。
結論 タンクレストイレとタンク付きはどちらが良いのか
この章ではタンクレストイレとタンク付きのトイレで迷っている方が、結局どちらにしたら良いのかを解説していきます。
1.タンクレストイレにした方が良い人
筆者が建築として多くの物件に関わってきた経験から、タンクレストイレにした方が良い人は下記に該当する方だと思います。
1.トイレにデザイン性を求めている |
2.予算に余裕がある |
3.節水を重視している |
4.掃除のしやすさを重視している |
5.トイレと寝室が近い間取りの家 |
6.トイレの奥行きが取れない間取りの家 |
1.トイレにデザイン性を求めている
タンクレストイレはトイレ空間をデザイン性の高い空間にできる商品が多く販売されています。
筆者が使用しているTOTOでは「ネオレストNX」という一見トイレとは思えないデザインの便器が販売されています。
※TOTOのHPから引用
あなたの家のトイレにデザイン性をもたらしたい時にはタンクレストイレを採用することで理想のトイレを作りあげることが出来ます。
2.予算に余裕がある
タンクレストイレはタンク付きのトイレや工務店やハウスメーカー向けに作られているビルダー商品と比較して価格が高くなります。
家の中の設備でトイレに掛ける予算に余裕がある方はタンクレストイレを採用すると良いでしょう。
3.節水を重視している
光熱費が高くなってきた昨今、冬期の暖房や夏季のエアコンを使用するための光熱費が安くなる傾向はありません。
毎月必ず掛かる水道光熱費を節約するために、タンクレストイレを採用して節水をする方法があります。
毎月の必要経費を節水で減らしたいと考えている方にとってはタンクレストイレは良い選択肢になります。
4.掃除のしやすさを重視している
タンク付きのトイレのように形状が入り組んでいる場所があると、掃除がしずらい場所に汚れが入り掃除の手間も時間も掛かってしまい掃除が面倒になってしまいます。
一方でタンクレストイレはトイレの形状が平坦で掃除がしやすいので掃除がしやすく掃除の負担を減らすことが出来ます。
筆者もどちらのトイレも使用していますが、掃除のしやすさは圧倒的にタンクレストイレのほうがまさると思っています。
5.トイレと寝室が近い間取りの家
タンクレストイレは水を流す音が静かなので、寝室に隣接もしくは近い間取りの家で使用すると良いです。
夜間トイレに行った際も寝室で寝ている人が水を流す音が気になることが少なくなります。
寝室だけでなく、仕事や勉強をするための個室にトイレが隣接している間取りの家でもタンクレストイレのメリットを享受することができます。
6.トイレの奥行きが取れない間取りの家
タンクレストイレはタンクつくのトイレと比べて奥行きが短い作りになっています。
間取りの兼ね合いでどうしてもトイレの奥行きが取れない場合はタンクレストイレを設置することでトイレの奥行きに少しでも余裕をもたせることが出来るようになります。
2タンク付きトイレにした方が良い人
筆者は建築のプロとしての視点からタンク付きトイレにした方が良い人は下記の点に当てはまる人だと思います。
1.トイレが一箇所の家 |
2.災害に備えたい人 |
3.トイレに予算をかけたくない人 |
1.トイレが一箇所の家
トイレが一箇所の家は万が一の災害や故障時に修理が早いタンク付きのトイレにしておくと安心感があります。
機会的な機能が集約している便座部分の故障が多いので、万が一故障が発生しても便座のみの取替ですみますので費用も抑えることが出来ます。
2.災害に備えたい人
災害が起きて停電が発生するとタンクレストイレは使えないわけではないですが、非常に使いづらいものになってしまいます。
3.トイレに予算をかけたくない人
トイレに予算を掛けたくない人はタンク付きのトイレにすることがおすすめです。
タンク付きのトイレはビルダー商品という、ハウスメーカーや工務店向けに独自の品番で販売されている商品で、価格が圧倒的にお得です。
新築やリフォームでトイレは最低限の機能で出来る限り予算を抑えたい方はビルダー商品の購入ができるかを確認すると良いでしょう。
まとめ
1.タンクレストイレのデメリット |
2.タンクレストイレのメリット |
3.タンクレストイレで経験した大停電を回顧 |
4.結論 タンクレストイレとタンク付きはどちらが良いのか |
上記の内容でタンクレストイレのデメリットとメリットをタンク付きのトイレと比較して解説しました。
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